【採用事例】「身の回りにあふれる石油製品や石油化学製品を暮らしのシーンの中に安定供給するために」
お客様の声 -Customer Feedback-
ENEOS株式会社 川崎製油所様
ENEOS株式会社 川崎製油所は京浜臨海地帯に立地し、エチレンの年間生産量は国内最大の100万トンを誇ります。日本は原油の99%以上を輸入に依存し、その80%以上はペルシャ湾周辺の中東産油国から12,000kmにおよぶオイルロードを経て運ばれてきます。ENEOS株式会社は、この原油から時代のニーズに合わせた石油製品を供給しています。
今回は、大規模石油化学プラントで、日本で数少ない米国認定インダストリアルハイジニストとして、安全衛生を管理されている持田様にお話をお伺いしました。
●ENEOS株式会社 環境安全1グループ 米国認定インダストリアルハイジニスト(CIH) 持田 伸幸様
●取材実施:2022年5月
環境安全1グループでの持田様のお仕事内容を教えてください。
米国で言うところのインダストリアルハイジニスト※1 がやるようなこと ̶ 作業ごとのハザードのアセスメントや、リスクアセスメント ̶ が主になっています。それに付随してさまざまな保護具の推奨、使うべき保護具の取り決めも行っています。
当社内で扱っている製品に関係する化学物質については、有害性等はわかっていますし、外部メーカーの化学物質を使う場合については、必ずSDSを見ながら、その中に何が含まれているか、どのようなハザードがあるのか、それが作業者にどのようなリスクをもたらすのか、使用量、使用方法や使用用途などを見て、全体的なリスクを評価しています。
例えば、塗装だと、現場からは「スプレーガンで打ちたい」と声が上がります。そこで私が、「でもこれハケ塗りかローラー塗りでできないか? スプレーだと揮発量が多くなるしエアロゾルがバーっと出てしまうので。」と言うと、「(ハケ塗りやローラー塗りで)できますよ。」と返事がくれば、じゃあそれが安全だからそれでやろうということで決まります。
また、どこで作業をするか、場所もリスクを左右するので重要です。「 作業場の建屋内でこういう塗装をやりたい。」という声に対しては「それ、そこ(屋内)じゃなきゃ駄目ですか? 外に持って行ってやったら駄目でしょうか?」というふうに、いかに安全に作業をするかという観点から問い合わせに返答します。
※1:米国認定インダストリアル・ハイジニスト(Certified Industrial Hygienist:CIH)
一定以上の教育歴(原則として理工系又は医学系の大学卒業者以上の学歴)を有し、関連する専門分野に関する大学院レベルの講座を履修済みで、一定の関連する分野で一定期間以上の実務経験を有し、さらに米国のインダストリアル・ハイジニスト認証機関である米国産業衛生専門家評議会(the American Board of Industrial Hygiene:;ABIH)が実施する試験に合格した者で、その後も継続して専門的能力の向上を行っていることが、(ABIHによって)認証されている者としての資格を有する者のことです。
引用元:中央労働災害防止協会ホームページ(www.jisha.or.jp)
「新規の作業、新規の化学物質の導入時は、すべて私を通ります」
主には現場作業員、技術者、保全・メンテナンスの担当者から相談が来ます。特に技術者からは、(業務の性質上からも)新規の化学物質を導入したいということが多いです。
そのような新規の作業、新規の化学物質を導入する際には、安全を確保するために社内で手順を定めており、必ず私を経由するようになっています。起案部署から相談があった際は、私がリスクアセスメントをして、「こういうリスクがあるので、作業者に必要な情報が伝わるように教育してください」と、現場の職人に教育するようにお願いします。そしてきちんと教育がされた結果を確認して、データベースに登録します。その後、作業OKになります。
製造や開発、修繕作業の現場とのやり取りをなめらかにするコツはありますか。
話す相手によると思います。地に足をつけて我々職人のことをちゃんと見てものを言っているよね、という姿勢で話をしてもらいたい人と、もう少し学術的に話を聞いて理解したい人とがいます。
理論的な人は、エビデンスを知りたいのかなと考えて、例えば次のようなことを伝えます。「この物質は〇〇年にアメリカで動物実験の結果で毒性が指摘されていますよ。これは動物実験ではあるけれども、こういう結果が出ているから人間にも害があると判断されています。また、人を対象にした疫学的な調査ではこういう結果があります。」
このように毒性に関する実験結果の資料などを読み漁って、情報を積み重ねることで、納得してもらえることがあります。
一方、もう少しガッチリ系の人には、職人的な立場で言わないと伝わらないんです。例えば何を言うかという情報に加えて、どう言うかという言い方が大事で、「でもこれ実際作業をしていたらさぁ! …」というトーンで話を持っていくと、「ああ、確かに危ないかもね!」と歩み寄ってくれる場合もあります。
私も駆け出しの頃は、タイベック®スーツ※2を着て防じんマスクを着けて、どろどろになりながら軒下を這いずり回るような現場を経験しているので、職人の立場や気持ちはよく分かります。やはり共感を得ることを基本姿勢にして相手を説得するのは効果的だと感じます。
※2 :デュポン™タイべック®製防護服
やはり現場の方は作業効率を落としたくないという観点から意見を出されるのでしょうか。
安全対策を徹底しつつ、作業効率を確保することを一緒に考えます。
大規模プラントメンテナンス作業では、10人位の職人さんをとりまとめてくれているリーダーとやり取りをしますが、(提示した方法に対して)職人に「そこまではさせることができるけれど、ここからはさすがにきつい」とか、許容できる範囲はそのリーダーのバランス感覚によるところがあります。
そしてその感覚が、効率を重視する方向に向く人と、安全に作業を完了させるにはという点を重視する人とで、さまざまで、相手から「提示されたやり方でやるとこうなるからさぁ、逆に危ないんじゃないの?」というようなやり取りも発生します。
そういう時は、安全に仕事をするというのは共通の目標だけれども、緩められる範囲というのがあるので、複数の選択肢を提示するようにします。「これをちゃんと確認するように教育してくれるんだったら、これはやらなくてもよいですよ。」など、選択肢を示してあげると、納得してくれることが多いです。その代わり、必要な教育はきちんと行われるよう、徹底してもらいます。
労働災害が起きたときの影響について
実際の大規模なプラントメンテナンスは1,000人規模で行いますが、作業自体は10人単位のグループで行います。例えばそのグループの中の一人が保護具をきちんとつけていて、安全対策もちゃんと行っていた中で作業をしていた。それでも被液時に隙間から目に入ってしまい、目が赤くなって炎症を起こしてしまったとします。このときには、目に入った場合はすぐに洗い流す処置をするようにお願いして、こういう事故があったから注意しましょうという注意喚起と事例の周知を行うことになります。これはきちんと日頃の教育と安全対策が取られた上での話です。
そのため、事故が起きた際の対応は、事故の影響度と、なぜ起きたのかという事故の性質によって、対応が変わります。一つの事故が起きたからと言ってすべてのラインを止めよう、ということはありません。重大なことが起きた場合は、作業を中止するという判断をする可能性もあります。
今後、いわゆる“DX”のような、新技術の導入が進んで行けば、労働災害の減少にもつながるのでしょうか。
そうですね。とくにドローンの能力はすごいですね。本来であれば難しい箇所であっても、簡単にカメラ撮影による点検等ができるので、効率の高さに驚きました。
他にも潜水士さんが潜って点検していたものが、水中ドローンで点検できるようになるなど、効率よく、安全に実施できるようになると思います。
個人ばく露モニターの強み。
通常のガス検知器で表示されるLEL%(爆発下限界濃度)を使用すると物質によっては既に有害性を発揮しているレベルなのに、0%と表示されます(LEL%はppm でいうと100ppm以上)。それをppm※3 レベルで測定できる個人ばく露モニターで管理できれば、有害性から人を守るという立場から言うと人を守ることができるし、早く検知できるので、より良い方向に働くと思います。
※3 :ppm(parts per million) =百万分の1を意味する言葉
具体的に個人ばく露モニターをどのように使っていますか。
日常の作業は個人ばく露モニターを使って、作業ごとのばく露レベルを測定して、現場を安全なレベルに管理しています。
可能な限り私が立会いながら、作業者に活性炭のバッジと個人ばく露モニターをつけてもらいます。作業を進める中で作業ごとに化学物質の濃度を測定し、この作業ではこのぐらい検知されるから、保護具はこういうものを使いましょうという運用を決めます。一方活性炭バッジの結果と併せて照合して、職場環境全体の濃度はこれくらいだから、健康上は問題ないですよ、というように、一つ一つ問題を潰していくようにしています。
作業ごとに防護服を使い分けている。
夏場は暑いので、全身防護が不要と判断された作業ではデュポン™タイケム®6000Fのガウンを冷却用のエアラインベストともに使用しています。従来はつなぎ服タイプを使っていましたが、職人が体中に冷却材を巻いて、10分単位でしか作業ができませんでしたので、ガウンを紹介していただきありがたかったです。
それでも、依然として体全体を防護する必要がある現場も残っていますので、冷却用のエアラインベストが併用できて、つなぎ服のように全身を防護できるタイプの防護服があれば、使ってみたいです。
採用製品
※デュポン™、タイベック®、タイケム®は米国デュポン社の関連会社の商標又は登録商標です。
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