【採用事例】「失敗の許されない、 1分1秒を争う現場活動で」

客様の声 -Customer Feedback-

姫路市消防局様

 姫路市消防局は、1948年に自治体消防として姫路市消防本部 姫路市消防署として設置され、現在は1本部・5署・2分署・13出張所の体制となり、福崎町をはじめとする受託3町を含め、地域の安全・安心の充実を図っています。管内には播磨臨海工業地帯も広がっており、多様な事故への対応をするために日々の訓練、準備を進めています。

 山岳地帯から多数の化学工場が集合した工業地帯まで管轄する姫路市消防局では、地域の安全・安心のため、メーカーとの新たな機材の共同開発や新技術の導入を積極的に進める等、さまざまな先進的な取り組みをされています。  

 レベルB対応として、デュポン™タイケム®6000F TF611T(以下タイケム®6000F)をご採用いただきましたので、ご担当の方にお話を伺いました。

 


●取材実施:2022年3月


【採用事例】「失敗の許されない、 1分1秒を争う現場活動で」

姫路市消防局について(人員、車両、管轄区域など)概要をお教えください。

 姫路市は兵庫県南西部に位置し、中心部には世界文化遺産姫路城が聳え、管轄区域には北は中国山地の雪彦山をはじめとする山岳地帯、南は瀬戸内海に浮かぶ家島諸島を擁し、温暖な瀬戸内気候区に属しています。

 管轄面積は、姫路市534km²と消防事務受託町3町(福崎町、神河町、市川町)を合わせると865.17km²で、管轄人口は令和4年4月1日現在で約56万6000人となっています。

 当局は、1消防本部・5消防署・2分署・13出張所、職員数は578人で構成され、主な保有車両は、指揮車3台・ST(スモールタンク)車16台・タンク車9台・はしご車6台・化学車3台・救助工作車3台・水難救助車1台・救急車21台・消防艇1隻・救急艇1隻となっています。救急艇は家島諸島の救急事案に対応し、本土までの搬送を主な業務としています。

管轄内には化学工場が多数ありますが、化学災害特有の装備などにはどのようなものがありますか?

 当局における化学災害に対応する資機材は、主として本部高度救助隊が保有し、同隊が特殊災害を担当しており、全市対応の体制を取っています。本部高度救助隊は、タイケム®6000Fを含む化学災害に対応するレベルに応じた防護服を保有しており、特別救助隊とともに最前線での活動を想定した防護服を数種類備えています。

 また、テロ災害や有毒化学物質の漏洩等における化学災害で活用する検知資器材としては、化学剤検知器や検知管を使用する有毒ガス検知器、酸素・一酸化炭素・硫化水素・可燃性ガスを1基で測定することができる複合ガス検知器等や熱画像直視装置を保有しており、化学物質を無害化させる粉状の中和剤も積載しています。

 なお、化学物質に汚染された方を救出する際、病院搬送前に化学物質等を洗い流す際に使用する除染テントも保有し有事に備えています。

災害現場の危険物の濃度測定や、危険性の評価などはどのようにして行うのでしょうか?

 化学災害においての危険物質の濃度判定については、前述の検知器にて測定を行います。物質によっては許容濃度が違うので、危険性の評価については、現場で安全データーシート(SDS)を活用し評価をしており、外部機関である日本中毒センターと連携し危険度の判定を行うこともあります。

 これに加え、当局では化学物質を多く取り扱う特定事業所において消防技術説明者制度を取り入れており、毒劇物の漏洩又は発生の有無や消防活動上の注意点等の情報をアクセスポイントで消防隊に提供し、漏洩や火災危険のある化学物資等の危険性や対処法について現地指揮本部において共有しています。

 より専門的な知見を現場活動に導入するためにも、毎月実施している「化学に関する研修会」に講師として来て頂いている兵庫県立大学名誉教授に、有事の際はホットラインで現場から物質の危険性について判断評価していただき、活動方針を決定する体制も構築しています。

 

ドローンの活用で生産性を上げる

 日頃の備えとして、事業所ごとに警防計画という詳細な資料を作成し、どこの事業所にどのような物質がどれぐらいの量で保管されているか、それぞれの物質の危険性などを事前に把握しています。出動の際には、これを活用し、例えば「A棟の中には〇〇の物質が保管されている」と確認したり、物質の性状や危険性を考慮した活動方針や指示を出しながら現場に向かうこともできています。

 また、ドローンの活用も進めています。ドローンは無人で災害現場を上空から俯瞰的に展望できるので、発災現場の位置や状況の把握、被災者の位置把握などのために効果的に活用しています。

化学災害の訓練内容にはどのようなものがあるでしょうか?

 訓練体制は、本部高度救助隊が各特別救助隊(2隊)及び各署救助隊(主に除染隊として活動する本署の消防隊3隊)と合同訓練を行っています。主に隊間の連携強化を目的に行っていますが、先着隊初動活動や救助活動、除染活動について技術の向上を図っています。具体的に分類して紹介すると、除染所のレイアウト訓練、乾的除染と水的除染に関する訓練、除染前トリアージ訓練、要救助者のショートピックアップと搬送方法の検証、拡散防止と検知活動に関する訓練などを実施しています。

 最近では、全署所から職員が参加し、東京オリンピック・パラリンピックや重要国際会議を想定したテロ対応訓練を、市の関係部局や医療機関と共に新規運用となる公共施設を利用して実施しました。

 また、先にも述べた通り、兵庫県立大学名誉教授を招いて「化学に関する研修会」を毎月行っており、各署所や近隣消防本部から職員が参加し、化学物質に関する専門的な知識や実災害時に役立つ知識についてご教授いただき、職員の能力向上を図っています。

※ホットゾーンからウォームゾーンへ早期に要救助者を搬送すること。

多数の化学工場が集合した播磨臨海工業地帯を管轄区域にお持ちですが、有害化学物質関連事案に備える中で、日頃の訓練の様子を教えてください。

 播磨臨海工業地帯のうち、本市では石油コンビナート等災害防止法に基づき姫路臨海地区特別防災区域が指定されており、その中でも14事業所が特定事業所に指定されるなど、さまざまな工場でさまざまな化学物質を多量に扱っている地域と言えます。 

 このような管内情勢において、デュポン社のタイケム®6000Fを使用する機会は頻繁にあり、化学物質が起因する事故等が発生した場合、ホットゾーンで活動する救助隊員及びウォームゾーンで活動する消防隊員は、全員半着装(空気呼吸器の面体をつける前までの状態のこと)で出動します。これは、活動する隊員の自己防御の徹底と併せて現場到着後に速やかに活動に着手し、発災場所へ早期に進入及び救出ができるよう、このような出動方法を取っています。この防護服の手袋はフィルム素材で操作性に欠けるため、上から背抜きのゴム手袋を装着して密着性を上げて出動しています。

 当局ではタイケム®6000Fを、レベルB対応として採用しており、特殊災害事案におけるスタンダードかつ必須の防護服となっています。

 

【採用事例】「失敗の許されない、 1分1秒を争う現場活動で」

装備を使いこなす専門的な知識や経験はどのようにして身につけていますか?

 当局では、毎年開催される兵庫県消防学校の特殊災害科や消防大学校NBCコースに入校し、自衛隊化学学校や警察庁科学警察研究所での研修派遣も適宜行っています。

 これらの受講者が最新の化学災害に関する知識や技術、専門的かつ応用的な手法を持ち帰り、所属職員にアウトプットすることで、常に特殊災害に関する最新の流れや手法等を組織に還元し、スキルの平準化と組織の活性化に繋げています。また、本部高度救助隊については月間で特殊災害を含めた定例訓練を計画し、ジョブローテーションに伴う小隊能力の低下を防ぐとともに、技術継承も含め、自隊訓練を実施しスキルアップに努めています。どのような資器材であっても、保有することだけに満足することなく、現場の状況に応じて使いこなせる人材と小隊育成が必須と考えています。

レベルB対応タイケム®6000FとレベルA対応気密服の使い分けについて教えてください。

 当局ではレベルA対応の気密服も配備しております。気密服とタイケム®6000Fの使い分けは、経皮からの吸収が影響する可能性があるテロ的な兆候がある場合や物質が特定できていない場合、ホットゾーンでの活動はレベルA防護服を使用します。

 タイケム®6000Fは多くの化学物質への耐性がありますが、すべての化学物質に耐性があるとは限りません。そのため、何が漏洩しているのか、どのような災害なのかが分からないときは、オールハザードアプローチを適用し気密服を着装します。

 一方で化学物質が明確に分かっていて、タイケム®6000Fでの対応が可能であれば、気密服よりも機動性が良いので、こちらを着て活動します。

 

同じクオリティで活動しなければならない現場で、隊員間で「目張り」のクオリティに差があった。

 以前、他社製の密閉型化学防護服を保有していましたが、化学災害の頻度がそこまで多くない当局において、化学防護服を維持していくことは、価格面からも困難で、収納方法にも苦慮していました。しかし、現場活動での隊員を守る防護服の質は落としたくない。その両方を考え、デュポン社製のタイケム®6000(旧名称:タイケム®F)・自給式空気呼吸器をレベルB対応として導入し活用していましたが、各署所で各救助隊等と年間を通して実施している化学災害対応合同訓練において、面体周りや手首等をケミテープで「目張り」する作業に苦慮する光景や意見がありました。

 この「目張り」のクオリティに、隊員間で差が出ることがわかり、誰もが同じ防護レベルで活動するという点では、迅速な着装が長年の課題でありました。また、主に除染活動を担う消防隊は訓練頻度も少なく、経験の浅い新人職員が乗車することも多いため、防護服の着装要領自体を簡略化し初動の迅速性を実現したいという思いがあり、やはり「目張り」箇所の削減と誰もが着装しやすい防護服の導入が必要と考えました。

 そのため、比較的安価なタイケム®生地の防護服に手袋とソックスが一体となっている物があれば、目張り箇所の削減から安全面の向上と着装要領の簡略化が可能で、長期的に大量購入も可能であるとの考えに至りました。

 当初は器具開発も視野に入れ、他の業務で繋がりがあったアゼアス(株)様に問い合わせたところ、手袋とソックスが一体となっている防護服(タイケム®6000F)をすでにデュポン社が欧州で販売しているとの情報を得ました。アゼアス(株)様に取り寄せていただき、当時は日本国内で販売されていなかったタイケム®6000Fを全国で初めて導入し、当局では現在も最前線で活躍しています。

 

非常に難易度が高いゾーニングの設定五感をフルに活用

 ゾーニングについては非常に重要視しており、厳格な進入統制のため、総務省消防庁のマニュアルに沿った定義で設定します。

 ホットゾーンは、発災の地点が閉鎖されているか、開放空間であるか、また、風向きなども考慮します。例えば建物の中で発災した場合で、換気装置の運転を停止したり扉を閉めることでほとんど飛散しない場合は、その建物をすべてホットゾーンにします。

 ウォームゾーンは、活動エリアも考慮してホットゾーンから120mの範囲としています。コールドゾーンとウォ―ムゾーンの間の進入統制ラインの設定も我々は重要と考えています。半着装で現場に到着した際に、完全に着装するラインがここで、簡単に言うと汚れた区域と汚れていない区域の可視化のために必要だからです。

 コールドゾーンの設定は、検知器を使って設定ラインを探ります。反応があった場合はそこをウォームゾーンとして考えますので、さらに下がったところがコールドゾーンになりますが、その線引きは非常に難しいと思います。我々の保有する検知器に反応しないこともありますので、器具での測定と併せて人間の五感も活用しています。特に視覚と嗅覚を非常に重視しています。検知器に反応しないけれども、腐卵臭や硫黄臭やその他の刺激臭がする場合は、そこを、ウォームゾーン又はホットゾーンとし、その手前をコールドゾーン又はウォームゾーンにします。また、視覚的にここから先は危険だと感じる場合は、最先着隊の判断で進入統制ラインを設定します。この進入統制ラインから先は、タイケム®6000Fまたは同等以上の防護服を装着して入ることを決め事にしています。

化学防護服は着脱に手間や難しさを感じることがあると思いますが、どのような対策を取られていますか?

 当局では、災害別活動マニュアルの中で特殊災害マニュアルを作成しています。特殊災害マニュアルとは、化学災害、生物剤災害、RI災害、N災害に対応するための共通事項を記したもので、まず全員が自己防衛や特殊災害における任務についての共通の認識を持てるようにしています。

 着脱方法については特殊災害を担当する本部高度救助隊が、年数回各消防署を回り、防護服の着装訓練を特殊災害合同訓練と併せて行っています。そこで正しい着脱方法や注意事項、ポイント等を伝え、消防署毎に反復訓練をしてもらい災害に備えています。 

 当局が採用させていただいたタイケム®6000Fは、全身一体型の防護服になっているので、従来手間を感じていたケミテープ等での目張りの必要もなく、簡単に着装することが可能です。ただ、背中部分のファスナーとフラップを正しく閉めることや防護マスクと顔周りのゴム部分の密着確認は必ず必要となるため、補助者との二人一組で着装し、自己防御のための正しい着装方法を確認するようにしています。フェイス部のゴム部分については、一番肌が露出しやすいので、面体との相性について注意しています。空気呼吸器の面体によっても密着具合が異なるので、当局では空気呼吸器を同一社製のものに統一することで解決しています。

 

防護装備を統一し活動時間を予測

 ゾーン内での活動中においては単独行動を厳禁とし、必ず二人一組のバディ行動をするように意識付けしており、可燃性ガス環境下における簡単な手信号についても取り決めています。

 特に真夏の防護服での活動は、体力的にも精神的にもストレスを感じることが多いのですが、タイケム®6000Fは目張りの必要もないため着装から進入までの時間が短縮でき、結果的に活動時間が短くなるため、業務効率化とストレス緩和に繋がっています。また、活動時間について、装備が統一されたことで活動時間も予想ができるようになり、現場での隊員管理が容易になったのも、タイケム®6000Fを導入した効果だと思っています。

 マニュアルによって共通の認識を持ち、同じことを何回も繰り返し反復訓練して連携を深めることが重要です。

 

【採用事例】「失敗の許されない、 1分1秒を争う現場活動で」

消防職員の立場から、日々化学物質を使用する化学工場の方に向けて、お伝えしたいこと、安全管理についてのアドバイスやメッセージがありましたらお願いします。

 我々消防職員は、日々化学物質を使用する関係者よりも、もしかすると化学災害に対しての知識は劣るかもしれません。しかし、安全管理については、化学災害だけでなく全ての災害に対しては同じであると考えています。

 毎日同じ行動をすると 必ず甘えが出てきます。その甘えが油断になり、不安全行動を取ってしまうことになります。特に危険な物質を取り扱う事業者の方々は、毎日の行動をもう一度見直してみることも大事かもしれません。例えば訓練でも、同じようなことを行うのではなく、環境を変えていつもと違う目線でチェックしながら行ってみるのも良いでしょう、工夫すれば事故を未然に防ぐことになると思います。我々消防職員は、現場活動で1分1秒を争い、かつ失敗は許されません。そのため、さまざまな訓練を何度も繰り返し、いつ起こるかも分からない災害に備えています。

 災害の現場では、「一人で作業をしていた」とか「普段通りの作業をしていても、何かいつもと違う要因があった」ということをよく聞きます。事故の原因は複合的ですが、当たり前のことを当たり前にやっていなかった、横着をして普段と違った行動をしたなどといった、ヒューマンエラーが根底にあると思います。それを防ぐには、当たり前は当たり前じゃない、異変に気づいたら「大丈夫だろう」ではなく、きちんと報告するという意識付けをすることが事故を防ぐことになると思います。

 そのため、作業手順などをもう一度見直してみてください。漏れに気付くかもしれません。チームで話合いも良いかもしれません。普段からのコミュニケーションは事故防止につながると言われています。間違った行動を指摘できる関係性を築くのも安全管理の第一歩であると考えます。今後も、化学災害に対して正しい知識を持ち、正しい防護を選択し「安全な行動」を心がけましょう。

化学防護服についてのリクエストはありますか?

 当局が採用している化学防護服タイケム®6000Fは、ディスポーザブルタイプ化学防護服です。繰り返し訓練に使用していると、フードの縁のゴム部分などが破れることがあります。その都度廃棄して新しい製品を訓練用に使いますが、コスト的に安いものではないので訓練用のスーツがあると良いのではないでしょうか。フードのゴムの部分の強化と生地も訓練素材を採用し繰り返し訓練しやすい「訓練用の防護服」を望みます。そうすることにより、より訓練しやすい環境が整えられ、現場活動の準備ができます。

 


採用製品

• デュポン™タイケム®6000F TF611T

• ケミテープ

※デュポン™、タイケム®は米国デュポン社の関連会社の商標又は登録商標です。


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