【採用事例】「基礎研究と臨床の架け橋となる 細胞プロセシングのための最先端研究施設」

客様の声 -Customer Feedback-

京都大学医学部附属病院 分子細胞治療センター様

 分子細胞治療センターは、京都大学医学部附属病院輸血細胞治療部内に創設され、平成15年度より運用が開始されました。

 治験薬GMP(Good Manufacturing Practice:医薬品等の製造管理および品質管理に関する国際基準)準拠のもと、治療の困難な疾病に対する新しい細胞治療法について研究開発が進められています。

 ヒトの全遺伝情報を読み取るゲノム医療は、その成果を実際の治療に応用する方向に医学研究の重点が移行され、培養操作や遺伝子改変を施された種々のヒト細胞や組織を治療用として実用される研究開発が、日々進められています。

 細胞医療や再生医療の研究開発には、科学的・倫理的に高い水準と信頼性が要求され、品質を保証するプロセシングを受けた細胞を用いることが極めて重要な課題となります。京都大学医学部附属病院 分子細胞治療センターにおいては、どのような研究開発が行われ、また、高いレベルでの安全性を担保する専用施設CPC(セルプロセシングセンター)を維持するためにどのような品質管理に尽力されているのか、設備保持をご担当されている笠井様にお話を伺いました。


●輸血細胞治療部 分子細胞治療センター 主任臨床検査技師 笠井 泰成 様

●専門分野:臨床化学遺伝子解析。

 認定臨床化学者、二級臨床検査士(血液学、臨床化学)、緊急臨床検査士、日本再生医療学会臨床培養士。

 CCMT開設当初時にあたる平成15年より設備保持担当(エンジニア)として着任。

 輸血部臨床技師の業務にも従事。

●取材実施:2016年12月


【採用事例】「基礎研究と臨床の架け橋となる 細胞プロセシングのための最先端研究施設」

京都大学医学部附属病院 分子細胞治療センターではどのような研究が行われているのでしょうか。

 当センターでは、ヒトの身体を構成している細胞や組織を利用して医療に用いる、細胞治療や再生医療などの研究を行っています。細胞治療は、ヒトの細胞を輸注、移植することによって行う治療の総称で、輸血治療を原型とし、造血器官細胞移植や細胞移入免疫療法、遺伝子治療、再生医療などがこれに含まれます。

 iPS細胞が大きくメディアで取り上げられたことから、細胞治療が革新的な治療法としてすでに実用化されていると認識されている方も多いようですが、今はまだ、近い将来実用化できるように研究開発が進められている段階です。

では、細胞治療に寄せられている期待や可能性についてお聞かせください。

 細胞治療や再生医療が注目されているのは、今まで不治とされてきた病気を、これらの医療技術を用いることで治療できる可能性が高くなることにあります。

 例えば、神経や骨、目の細胞などを再生することも可能になります。糖尿病はインスリンというホルモンが枯渇して血糖値のコントロールができなくなる病気ですが、再生医療によりインスリンを生成する組織を移植することで血糖の安定性を取り戻せるようになるのです。

 ただ、このように治せなかった病気を治せる可能性が充分にあるわけですが、細胞治療や再生医療の安全性をどのようにして確保するかが重要課題で、この課題をクリアできないと実用化が難しいわけです。

安全性の確保はどのようなガイドラインに基づくのでしょうか。

 細胞自体は人工的に作り出せないため、細胞治療にはヒト由来の細胞や組織を使うことが原則で、また、細胞プロセシングという細胞の調整、培養、加工などの工程が必要です。細胞プロセシングを受けたヒトの組織や細胞を細胞医薬品として治療に応用するためには、医薬品や原薬の製造と同等の安全性と高い品質管理が求められます。

 当センターでは開設以来、治験薬の製造管理および品質管理に関する基準である治験薬GMPに準拠した運用基準を定め、すべての製造工程や品質管理をこの運用基準に沿って実施してきました。実は、細胞治療は十数年前から行われてきましたが、安全性を確保するための法律が施行されたのが平成26年11月。それ以前は、薬事法や関連するガイドラインなどに沿って行われていました。薬事法は治療薬や医療機器を対象とした法律で、細胞組織は、「化学物質(ケミカル)」ではなく「生モノ」ですから、矛盾が生じる場合もあり、細胞治療に向けた新しい法律の施行は、大きな一歩といえます。

CPCの研究環境についてお聞かせください。

 当センターには、細胞培養室(クリーンルーム)とサプライ室、培養準備室、細胞保存室、滅菌室などを備えています。クリーンルームの室圧は、作業内容に応じて設定することが可能で、また、交差汚染防止のためにエアーロック室を設置し、作業者の動線も一定規準を設けています。各室内の環境もモニタリングシステムにより24時間監視し、異常が発生した場合には、管理担当者の携帯電話にe-mailが自動送信される仕組みになっています。

 

【採用事例】「基礎研究と臨床の架け橋となる 細胞プロセシングのための最先端研究施設」

CPCの運営において重要なのはどのような点でしょうか。

 取り扱う細胞組織は、ドナーの方から提供された貴重な素材であり、しかも、最終的には患者様の身体に移植されるものですから、異物が入り込まないよう徹底した運営管理が重要です。異物というのは、他の細胞であったり、塵や埃、病原体やウイルスなどで、これらが一切入り込まないようにするには非常に高い水準での環境維持が必要となるわけです。さらには、取り間違いなどヒューマンエラーの防止として同時に複数の細胞を扱わないなど、細かなルールを決めて作業を行うことも大事なことで、衛生管理、製造管理、品質管理などを中心とした、細胞プロセシングに関連した運用基準を習得した後、それぞれの作業従事者が担当する業務の実技についても各研究室と連携したトレーニングを実施しています。

クリーンルーム内の清浄度の維持や交差汚染の防止についてどのようなことを留意されていますか。

 クリーンルームへの入退室にあたっても、教育・訓練を実施しています。クリーンルーム内に持ち込む試薬や器具は原則すべて滅菌処理が行われたものに限ります。ところが、滅菌できないものが2つあります。1つは細胞組織。もう1つは作業者自身です。私たちは普段、微生物と共存して生きているので、どんなに清潔で健康な状態でも、皮膚や毛髪、口内などにはいろんな常在菌が存在しています。それを滅菌するのは実は不可能に近いのですが、菌が飛散することは絶対食い止めなければならない。そこで、入室にはガウニング(滅菌された無塵衣の着用)がとても重要になります。

 入室にあたっては、3段階のガウニング工程があります。外着を院内のユニフォーム着替え、次にクリーニング滅菌された術衣に。続いて、マスク、ヘアキャップ、シューズカバーで一通り身体を包み込みます。これはあくまでも清潔な状態であって無菌状態ではありません。クリーンルームの入り口側と出口側にはエアーロック室があり、ここでさらに滅菌された無塵衣を着用して入室します。

 

【採用事例】「基礎研究と臨床の架け橋となる 細胞プロセシングのための最先端研究施設」

クリーンルームでの作業において無塵衣へのご要望などがあればお聞かせください。

 これまでお話しした通り、細胞プロセシングを行うには研究の成果を臨床へと引き継ぐための架け橋となる環境を充分に整備されることが優先されるといえます。

 当センターでは、開設以来、クリーンルームでの作業時にタイベック®アイソクリーン®を採用してきました。他製品を採用していないのは、これまでの採用実績がないことに他なりませんが、これまで無塵衣が原因でトラブルがない安心感。人為的過誤の徹底した防止も含めて、タイベック®アイソクリーン®を信頼しています。


採用製品

CPC施設内の防護服としてデュポン™タイベック®アイソクリーン®を着用いただいています。

タイベック®アイソクリーン®は、高密度ポリエチレンの連続極細繊維に熱と圧力を加えて結合させてつくられた防護服用素材タイベック®を生地に使用した無菌処理可能な衣料です。

• デュポン™タイベック®アイソクリーン® IC253CS (カバーオール)

• デュポン™タイベック®アイソクリーン® IC668CS (フード)

• デュポン™タイベック®アイソクリーン® IC458CS (ブーツカバー)

※デュポン™、タイベック®、アイソクリーン®は米国デュポン社の関連会社の商標又は登録商標です。


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