【採用事例】「神戸医療産業都市に開設された毛髪再生医療の中核となる最先端研究施設」
お客様の声 -Customer Feedback-
資生堂細胞加工培養センター(SPEC®)様
兵庫県神戸市にある神戸医療産業都市は、産官学の連携によって21世紀の成長産業である医療関連産業の集積を図った特区で、先端医療技術や機器などの臨床応用と実用化に取り組む研究機関・企業・団体がここに進出しています。
資生堂は平成26年5月に、いわゆるCPCの施設として、資生堂細胞加工培養センター(SPEC®)を開設し、毛髪再生医療の事業化に向けた研究開発を進めています。
資生堂は、創業期より薬学をオリジンとして、頭髪、毛髪研究に取り組んできました。これまでに生体関連成分を配合した育毛剤の開発を手がけるなど、頭皮や毛髪に関する細胞・遺伝子レベルからの研究を強みに事業展開しており、さらに新たな研究技術へのチャレンジとして、平成25年にはカナダの企業と技術提携し、相互の技術を融合することで、安全で有効な毛髪再生医療の早期実用化に向け活動しています。
一般にヒトに投与される医薬品などについては、初期の段階から安全性を含めた品質の担保が求められますが、特に再生医療で供される細胞加工物などでは、作業過程や保管時の細胞の取り違えや、作業中での微生物や目的外細胞などの混入など、ヒューマンエラーの要素をいかに減らすかが重要な課題となります。
そこで、資生堂細胞加工培養センターでは、これらの要素を減らすため、どのような活動を進めておられるのか、製造部門の責任者代行を務めている山口様にお話を伺いました。
●ライフサイエンス研究センター 再生医療開発室 製造管理責任者代行 山口 歌奈子 様
●ファンデーションの開発に努めた後、平成26年より資生堂細胞加工培養センターに着任し、細胞培養の製造工程設計と立ち上げに従事。以後、施設運営における製造管理責任者代行として、従業員教育を含めた製造部門の管理運営を担う。
●取材実施:2017年4月
資生堂細胞加工培養センター(以下、SPEC®とする)ではどのような研究が行われているのでしょうか。
弊社は育毛料を含む化粧品製造販売事業を母体としていますが、近年、壮年性脱毛症や薄毛に悩む方々への期待にお応えするべく、美容と医療を融合した安全で有効な毛髪再生医療の事業化に向けた研究にも取り組んでいます。
再生医療は、ヒト由来の組織・細胞を移植して自己再生能力により治療する方法です。大別すると、患者様自身の細胞を用いる“自家細胞移植”と、他人の細胞を用いる“他家細胞移植”の2タイプがあります。弊社が技術提携し取り組むのは「自家細胞移植技術」になります。
これは既に海外で安全性が確認された毛髪再生技術を基に、資生堂で長年の毛髪研究により培った自社技術と組み合わせ、専門医師による指導・要請の下、SPEC®において細胞製剤の製造や、細胞培養や品質担保に関する研究を進めています。
では、具体的な治療方法と、その治療に寄せられている期待、可能性についてお聞かせください。
男女問わず脱毛症の患者様の後頭部位から毛包を含む直径数mm程の頭皮を採取し、特定の細胞を取り出し培養し増やした後に患者様の脱毛部位に自家細胞移植します。そうすることで、脱毛部位に健康な頭髪の成長を促し、脱毛や薄毛を改善するという治療方法です。
従来の植毛のような広範な頭皮の切除が不要なため、外科施術における身体的負担が小さく、また、患者様自身の細胞を移植するので、移植後の拒絶反応などのリスクも小さいのが特徴です。また育毛剤と比較して、一度の施術での効果の持続性についても期待されています。
壮年性脱毛症で悩まれているのは男性だけの印象ですが、実は女性で薄毛に悩まれている方も多くおられます。女性の場合、薬剤の選択肢が限られるため治療手段が限定的なことから、男女問わず適用できる可能性がある本治療法が期待として挙げられています。
神戸医療産業都市にSPEC®が開設されたことで、メリットを感じられることがあればお聞かせください。
SPEC®が開設された神戸医療産業都市は、再生医療機関やバイオベンチャー関連の企業が集まる特区で、先端医療センターや理化学研究所などの医療・研究機関をはじめ、医薬品や医療機器などの企業が周辺に集まっています。個人的観点になりますが、域内での勉強会や意見交換会も多数実施されるため、知識情報の習得機会が多く、たいへん恵まれた環境で研究開発が行えることを有り難く感じています。
さらに機器の代理店など、周辺領域を支える企業が近隣に多いことも心強いです。一度開始した細胞培養は中断させることができないため、消耗品をはじめとする備品類が安定して供給されることや、機器トラブル時には、修繕要請に迅速に対応していただけることが大きな利点と思います。
CPC(セルプロセシングセンター)の運営において重要なのはどのような点でしょうか。
SPEC®での細胞製造は基本的に医療機関の要請に基づき実施されますが、CPC施設として、この要請に常日頃から万全の体制で実行できるよう維持することが重要です。その一つは、空調設備の保守や、清掃を中心とする施設清浄度維持のための活動や、その妥当性を検証するため施設環境モニタリングによる評価を行うこと、二つ目に細胞培養に必要な原材料のほか、作業衣などの間接備品も適切量を維持保管すること、三つ目として作業者の熟練度維持のため文書教育と実地訓練の両面でのトレーニングを継続することなど、ソフト・ハード両面での取り組みが重要です。
細胞製造作業時の取り違え防止では、作業者教育のみではヒューマンエラー防止に限界があるため、容器に固有のバーコードを貼付して、指示と異なる容器を選択したときは、警告表示できるシステムを採用するなど、こちらもソフト・ハードのダブルでチェックすることが、運用時の信頼性向上に重要と考えています。
CPC内の清浄度の維持や作業において、どのようなことに留意されていますか。
清浄度の維持には、清浄区域ごとの適切なルールとその正しい運用が欠かせません。作業者は、CPCへの入退室や作業に関する教育・訓練を受け、動線を含めて定められたルールに則って作業を行います。持ち込む試薬や器具が滅菌処理されているのはもちろん、培養作業外においても、清掃に始まり清掃に終わるというほど、施設内の清浄度維持に努めています。
CPC内はチリや埃などの物理的な異物のほか、細菌などの微生物的異物に対しても徹底した除去を行います。目に見えないものを清掃するというのは、作業者の達成感が得られにくいため、往々にして作業意欲の低下が起こり、汚染リスクを増大させる可能性があります。そこで、作業チェック表を活用するなど、常に貴重な細胞を扱っているという問題意識をメンバーで共有し合うよう留意しています。
CPCでのガウニングについてお聞かせください。
CPCでは、エリアごとに適した着衣を規定しています。例えばCPC施設の通常のエリアにおいても、低発じん性の作業衣に着替えますが、CPC内への入室では、更に発じん性が低い衣服への更衣や、無じん衣と手袋、マスク、ヘアキャップ、シューズカバーで身体を包み込みます。
極端な表現になりますが、人自体が汚染源であるため、作業者自体からの汚染拡散防止に、適切なガウニングがとても重要です。
無じん衣へのご要望などがあればお聞かせください。
弊社ではSPEC®開設以来、CPC内での作業時にタイベック®アイソクリーン®を採用してきました。変わらず採用してきた理由は3つありまして、安定供給、使いやすさ、耐久性です。長時間作業を行うので、摩耗して埃が出ることは大きな問題になりますが、これまで無じん衣が原因のトラブルはなく、使用するうえで安心感があります。また、これまで長期にわたる欠品が無かったなど、安定供給という面で信頼があります。
CPC内は写真で見る限りでは、無音で無機質な印象かと思います。しかし室内は空調機の音で想像以上の騒音です。そのような中で長時間の作業を行いますので、なかなか過酷な環境であることは否めません。また入室前には、洗浄・消毒、着替えなどに時間がかかるうえ、細胞を取り扱うエリアでは多重着衣することから、作業者によっては、作業衣内が蒸れて、さらに疲労感が増すと言った意見も多く聞きます。
よって作業者負担を軽減するという面から、メーカーには、一層の作業性や快適性を追求していただければうれしく思います。
採用製品
CPC施設内の防護服としてデュポン™タイベック®アイソクリーン®を着用いただいています。
タイベック®アイソクリーン®は、高密度ポリエチレンの連続極細繊維に熱と圧力を加えて結合させてつくられた防護服用素材タイベック®を生地に使用した無菌処理可能な衣料です。
• デュポン™タイベック®アイソクリーン® IC253CS (カバーオール)
• デュポン™タイベック®アイソクリーン® IC668CS (フード)
• デュポン™タイベック®アイソクリーン® IC458CS (ブーツカバー)
※SPEC®は、株式会社資生堂の登録商標です。
※デュポン™、タイベック®、アイソクリーン®は米国デュポン社の関連会社の商標又は登録商標です。
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