防護服の着脱について 「第2回 化学防護服編」
防護服の着脱について 「第2回 化学防護服編」
はじめに
防護服は、着用中だけでなく着脱時にも感染や汚染のリスクが伴います。特に医療現場や化学物質を扱う環境では、手順の違いや注意点を理解することが不可欠です。
全3回の本シリーズ記事では、感染症対策用防護服や化学防護服、クリーンウェアなどの着脱方法について、ポイントを押さえて解説します。
第2回は化学防護服の着脱についてです。
目次
防護服の着脱手順の重要性
防護服はその性能を正しく発揮するため、また有害物質からのばく露を防ぐために正しい方法や手順で着脱することが非常に大切です。
たとえ防護性能が高い防護服を準備しても、防護服と他の保護具の間に隙間が空いてしまうと、ガス状やミスト状の有害物質は容易に服内に入り込んでしまいます。
たとえ防護性能が高い防護服により作業中に有害物質からのばく露を防いだとしても、防護服を脱ぐ時の不注意で、服の外に付着した有害物質に触れてしまう事があります。
このように、防護服は着用時だけでなく、脱ぐ時にも大きなリスクが伴うため、正しい手順に従って着脱を行うことが重要です。
化学防護服の着衣の手順
化学防護服の着衣の手順例について解説します。
今回紹介する防護服及び保護具の種類は以下の7点です。
●デュポン™タイケム®2000
●全面形呼吸用保護具(防じんマスク、防毒マスクなど)
●化学防護長靴
●インナー化学防護手袋
●アウター化学防護手袋
●ヘアーキャップ
●養生テープ
防護服を着用する際のインナーウェアは、軽量で綿など吸汗性に優れ、万が一の場合に廃棄可能な長袖、長ズボンの動きやすい服装を着用しましょう。厚手のインナーウェアを着用する際は、大きめのサイズの防護服を準備してください。着用者が身につけている時計などの装飾品は、防護服を損傷させる恐れがあるので外します。
椅子を使用する場合は防護服を汚染や損傷から防ぐために、角が鋭利ではない突起物のない椅子を使用します。
まず、着用前に防護服とその他の保護具の点検を行いましょう。
デュポン™タイケム®2000に破れやほつれなどの不具合がないか確認します。
インナー手袋に空気を吹き込んでみて、穴が空いていないか確認します。
椅子に座った状態で最初に靴を脱ぎ、ソックスをズボンの上に被せるように履きましょう。座った状態で防護服に足を通します。防護服の裾は膝下程度まで引き上げます。化学防護長靴を履く際は、防護服の裾を長靴に被せます。(注:作業環境によっては防護服の裾は長靴の中に入れる場合もあります)
次に防護服に腕を通します。ファスナーは全て閉めず、胸の上の位置で止めます。
続いてインナー手袋、次いでアウター手袋を装着します。アウター手袋は介助者の手を借り、防護服の袖を覆うようにします。また、アウター手袋と防護服の境目を介助者にテープで養生してもらいます。この際、取り外しやすいようにテープの端を折り返しておきましょう。

続いて、全面形呼吸用保護具を装着します。その際、毛髪の巻き込みを防ぐためにヘアキャップを被ると有効です。全面形呼吸用保護具はゴムバンドの締めすぎに注意しましょう。
装着後はマスクのフィットテストを行いましょう。マスクのフィルター部分を軽く両手で覆うようにしながら息を吸い込みます。空気漏れがなければマスク内が陰圧になり顔に張り付きます。また、フィットテスト時にマスクのフィルターを手で覆う時は手に力を入れすぎないように注意してください。

全面形呼吸用保護具を装着したら、介助者は防護服のフードを被せ顎の下までファスナーをしっかりと上げます。介助者は防護服のファスナーカバーを貼ります。
続いて、顎カバーもしっかりと貼り付け、全面形呼吸用保護具をテープで養生します。その際、フード周りは湾曲しているのでテープを細かく切りながら貼ってください。裾口周りも同様にテープで養生します。この際、防護服との間からインナーウェアが露出しないように注意してください。裾口周りは屈んだりする際に突っ張らない程度に少し余裕を持たせた位置で止めてください。

現場の状況によっては、ヘルメットを防護服のフードの上に装着してください。
最後に介助者に全体のチェックをしてもらい、問題がなければ装着は完了です。
化学防護服の脱衣の手順
続いて脱衣の際の手順例とポイントについて解説します。
脱衣のために一時的な管理区域を設けます。脱衣は一時的な管理区域内で行い、脱衣後は正常区域へ移ります。
脱衣の前には除染を行います。ウエス、水、刺激の少ない食器用洗剤などの中性洗剤等を使用しましょう。その際、酸化性、腐食性、反応性のある除染剤や中和剤は使用しないでください。
消毒薬を使用する場合は残留消毒薬を除去してから脱衣をしてください。その際、使用する消毒薬が防護服の性能劣化を引き起こさないことを確認しましょう。
水と反応し発熱する化学物質で極度に汚染された場合、除染時に発生する熱により防護服が破損する恐れがあります。そのため、除染の前に砂や非反応性の吸収剤などを用いて除去してください。
防護服が汚染されている、またその恐れがある場合、介助者も防護服、呼吸用保護具などを装着してください。
脱衣時には、はじめにアウター手袋を外します。介助者は養生テープを剥がします。
その際、可能であれば手袋の袖口をつまんで裏返しにして外します。これは汚染された部分を裏返すことによって二次汚染を防ぐためです。もう一方のアウター手袋も指を袖口に入れて裏返しにして外します。

介助者はヘルメットを外し専用の回収箱に入れます。
その後、介助者はマスク周辺や裾口周りのテーピング部分を剥がし、専用の廃棄箱に入れます。
続いて顎カバーとファスナーカバーを外します。その後、防護服の上半身のファスナーを開けます。皮膚や毛髪に触れないようにフードを外します。介助者は両肩から防護服の外側を掴んで防護服を脱がせ腕を袖から抜きます。椅子に座る前に防護服を膝下まで下ろします。これは使用者の衣服の汚染を防ぐためです。

膝下まで下ろした防護服は汚染された部分を丸め込むように裏返しながら脱いでいきます。必要に応じて介助者は化学防護長靴も一緒に足から引き抜きます。この時、手袋をした手で衣服を触らないように注意してください。
脱いだ方の足は正常区域側へ降ろし、脱いだ防護服は専用の廃棄箱に入れます。
全面形呼吸用保護具はマスクメーカーが指示する適切な外し方に従い外してください。マスクは専用の回収箱に入れます。
次にインナー手袋を外します。片方の手袋を裏返しながら外します。裏返った手袋でもう一方の手袋を掴み、同様に裏返しながら外します。
その後、専用の廃棄箱に入れましょう。
最後にヘアキャップを外します。ヘアキャップは防護服と同じ廃棄箱に入れます。これで脱衣完了です。脱衣後は手洗い、うがい、洗顔をしてください。
汚染された防護具は国や地方自治体の指示に従い適切に廃棄してください。また、使用した機材、養生を撤去した後の床や壁の汚染チェックを行いましょう。
化学物質や化学薬品から作業者を守る保護具は正しく使用してこそその効果を発揮するので、着脱の際は今回紹介した手順とポイントを参考に、正しく着脱しましょう。
詳細な手順はこちらの動画をご覧ください。
【動画】[着脱] デュポン™タイケム®2000防護服の着脱方法
まとめ
本記事では、化学防護服の着脱手順例とポイントについて解説しました。
今回紹介した着脱手順例は当社の代表的な製品を使用して説明しましたが、防護服・保護具の種類や作業環境によって着脱の手順と注意すべきポイントは異なります。
例えば、「防護服の袖は手袋に被せるのか?手袋の中に入れるのか?」「防護服のズボンの裾は長靴に被せるのか?長靴の中に入れるのか?」
その方法は、作業の環境によって考慮する必要があります。
防護対象の化学物質と作業内容から適切なリスクアセスメントを行い、耐透過性データや製品情報を基に選んだ防護服・保護具と作業環境にあった着脱方法を実践して下さい。
詳しくはこちらをご覧ください。
また、当社ではシチュエーションに応じた化学防護服の着脱についてのノウハウがございます。自治体や工場等での着脱講習やデモンストレーションも積極的に行っておりますので、お気軽にご相談ください。
製品情報
本記事で紹介した製品の詳細はリンク先からご確認ください。

