防護服の着脱について 「第1回 感染症対策用防護服編」
防護服の着脱について 「第1回 感染症対策用防護服編」
はじめに
防護服は、着用中だけでなく着脱時にも感染や汚染のリスクが伴います。特に医療現場や化学物質を扱う環境では、手順の違いや注意点を理解することが不可欠です。
全3回の本シリーズ記事では、感染症対策用防護服や化学防護服、クリーンウェアなどの着脱方法について、ポイントを押さえて解説します。
第1回は感染症対策用防護服の着脱についてです。
目次
防護服の着脱手順の重要性
防護服はその性能を正しく発揮するため、また有害物質からのばく露を防ぐために正しい方法や手順で着脱することが非常に大切です。
たとえ防護性能が高い防護服を準備しても、防護服と他の保護具の間に隙間が空いてしまうと、ガス状やミスト状の有害物質は容易に服内に入り込んでしまいます。
たとえ防護性能が高い防護服により作業中に有害物質からのばく露を防いだとしても、防護服を脱ぐ時の不注意で、服の外に付着した有害物質に触れてしまう事があります。
このように、防護服は着用時だけでなく、脱ぐ時にも大きなリスクが伴うため、正しい手順に従って着脱を行うことが重要です。
感染症対策用防護服の着衣の手順
感染症対策用防護服の着衣の手順例について解説します。
今回紹介する防護服及び保護具の種類は以下の6点です。
●ゴーグル
●N95マスク
●防護服 デュポン™タイベック®ソフトウェア®Ⅲ型
●インナー手袋
●アウター手袋
●シューズカバー
●養生テープ
防護服を着用する際のインナーウェアは汗を吸い取りやすく動きやすい素材の服を選びましょう。
最初にインナー手袋を装着します。インナー手袋は袖口まで覆うようにしましょう。
次に防護服タイベック®ソフトウェア®Ⅲ型を着用しますが、その前に準備として、ソックスをズボンに被せるように履くとよいでしょう。
防護服タイベック®ソフトウェア®Ⅲ型は、事前に破れている箇所やほつれがないかチェックしましょう。
まず足を通してから腕を通し、ファスナーは全て閉めず首の下で止めましょう。
靴を履いてシューズカバーを装着します。シューズカバーはタイベック®ソフトウェア®Ⅲ型の裾を覆い、紐でしっかりと結びます。
この際、タイベック®ソフトウェア®Ⅲ型とシューズカバーの間にインナーウェアが露出しないように注意してください。
次にマスクを装着します。まず2本のゴム紐をまとめて持って頭を通し、1本を耳の上に、もう1本は耳の下から後頭部に固定します。マスク本体を顔に装着し形を整えた後にフィットテストを行います。マスクの前面を両手で押さえて息を強く吐き、マスク周りから空気が漏れていないかをチェックしましょう。

次にあらかじめゴムバンドの長さを調節したゴーグルを装着します。
マスクとゴーグルを装着したら、防護服のフードを被り顎の下までファスナーをしっかりと上げます。
その後、介助者の手を借り、ファスナーカバーを貼り、顎カバーもしっかりと貼り付けます。
その際、フードでマスクが隠れてしまったりフードから髪の毛がはみ出たりしないように注意しましょう。また、ゴーグルのバンドが外に出ないように気をつけましょう。
最後にアウター手袋を装着します。防護服タイベック®ソフトウェア®Ⅲ型の袖の上に被せて深くはめましょう。必要に応じて、防護服と手袋・シューズカバーの開口部をテープで養生します。この時にテープの端を折っておくと、脱衣がスムーズになります。

装着が完了したら、きちんと装着できているかを介助者の方に必ず確認してもらいましょう。異常がなければ装着完了です。
感染症対策防護服の脱衣の手順
続いて脱衣の際の手順例とポイントについて解説します。
防護服の脱衣の際には「ウイルスなどの有害物質が付着している」と考え、2名以上でチェックしながら慎重に行いましょう。
まず、事前準備としてシューズカバーやアウター手袋をアルコールなどで消毒し、ウェットティッシュなどで拭き取ります。
拭き取りが済んだらシューズカバーの紐を解いておきましょう。
最初にアウター手袋を外します。片方の手袋を裏返しながら外します。裏返った手袋でもう一方の手袋を掴み、同様に裏返しながら外します。
その際、外側を掴んで外すと有害物資が飛散する恐れがあるので注意しましょう。

タイベック®ソフトウェア®Ⅲ型を脱ぐ際は有害物質がインナーウェアや皮膚につかないように、介助者の手を借りて慎重に脱いでいきます。
まず、前ファスナーを一番下まで下ろし、皮膚や毛髪に触れないようにフードを外します。
次に腕を後ろに回して肩から脱ぎ、手を袖の中に入れ両手をゆっくりと引き抜きます。
腕を引き抜いたら防護服の表面を外側に丸め込むように脱ぎ、シューズカバーも一緒に外しましょう。この際、インナー手袋はまだ外さないようにしてください。
フードの外側を持って外したり、腕を前で交差させて脱ぐと有害物質がインナーウェアに付着する可能性があるので注意しましょう。
ゴーグルを外す際はバンド部をつかみ、ゴーグルの表面に触れないように注意して外します。
続いて、マスクも同様にゴム紐部をつかみ、下側のゴム紐からマスク表面に触れないようにゆっくりと外します。
インナー手袋を外す際は、アウター手袋と同様に裏返しながら手袋を外します。その際、強く引っ張って離すと有害物資が飛散する恐れがあるので注意しましょう。

脱衣中は必要に応じてアルコールなどで手指消毒を行いましょう。
脱いだ防護服とその他の保護具は各自治体の指示に従って正しく廃棄しましょう。
ウイルスや細菌などの有害物質から身を守るための防護服は正しく着用してこそその効果を発揮できるので、着脱の際は今回紹介した手順とポイントを参考にしてください。
詳細な手順はこちらをご覧ください。
動画はこちら
【動画】[着脱] タイベック®防護具の正しい装着・脱衣方法(感染症対策用)
漫画はこちら
汚染管理
感染症対策用防護服の着脱はどこで行えばよいのでしょうか?
感染症対策では汚染管理の為にゾーニングの考えが大切です。ゾーニングは交差汚染(汚染度の高いものが汚染度の低いものに接触することで汚染が広がること)を防ぐためなどに設定されます。 清浄な区域から作業にあたる者が、感染性廃棄物や作業後の防護服などになるべく近づかないように、次のことに注意しましょう。
・動線をはっきりさせる
入口と出口を明記し、人の流れを一方通行にする。
・空気の流れを管理する
清浄区域から汚染区域へ新鮮な空気が流れるようにする。
・汚染物の保管場所を明確にする
防護服の着脱は準汚染区域(warm zone)で行うのが一般的です。防護服に
付着したウイルスや細菌などの有害物質を清浄区域に持ち込まないようにしましょう。
まとめ
本記事では、感染症対策用防護服の着脱手順例とポイントについて解説しました。
今回紹介した防護服・保護具は当社の代表的なキットの内容を例に説明しましたが、感染症対策と言ってもさまざまなシチュエーションがあります。病原体(ウイルスや細菌)の毒性や感染力の強さ、作業は屋外か病院等の建物内か、感染者に対峙しているか、除染や清掃の作業か、シチュエーションによって選択すべき防護服・保護具の種類と着脱の手順や汚染管理の考えが異なります。
感染のメカニズムを理解し、病原体のリスク評価と作業内容から、防護服・保護具を選択し、運用する事が大切です。
詳しくはこちらをご覧ください。
また、当社ではシチュエーションに応じた感染症対策用防護服の着脱についてのノウハウがございます。自治体や病院での着脱講習やデモンストレーションも積極的に行っておりますので、お気軽にご相談ください。
製品情報
本記事で紹介した製品の詳細はリンク先からご確認ください。

