ポイント網羅!防護服の着用方法・脱衣方法

ポイント網羅!防護服の着用方法・脱衣方法

はじめに

感染症対策用防護服や化学防護服は、マスク、インナー・アウター手袋、保護めがね、シューズカバー等と組み合わせて着用者を守ります。 

ここでは、各アイテムの機能をフルに発揮するための防護服・保護具の着用や脱衣の際のポイントやコツをご紹介します。

 

― 目次 ―

・結論:最も大事なこと

・そもそも、なぜ防護服を着用するのか?

・正しく着用できていない例を見てみましょう

・適切な着用のポイントとコツ

・適切な脱衣のポイントとコツ

・着脱方法を動画でおさらい

・「やってしまった!」失敗したときの対処法

・最後に忘れずに行いたいこと

 

結論:最も大事なこと

最も大事なことは、一番汚染されているアイテムを最初に外し、マスクは最後に外すことです。

その理由は、防護服を着用する目的にあります。

 

そもそも、なぜ防護服を着用するのか?

なぜ防護服や保護具を着用するか、整理しておきたいと思います。

 

答えは“自分を守るため”“汚染の拡大を防ぐため”です。

 

・自分を守るため

 感染症対策の場合、汚染源は病原体を含むと考えられる血液や体液、その他培地等の液体、飛沫、飛沫が空気中を浮遊するエアロゾル等です。これらにばく露し感染することから自分を守るためには、体内に吸引しない・粘膜や皮膚の傷口から侵入させないことが重要になります。

 防護服やマスク等の保護具は、病原体と自分とを隔てる一種の“盾-シールド”のようなもので、汚染源が身体に直接触れないようにする効果を期待して使用するものです。

 ですから、防護服や保護具を着用・脱衣するときには、その表面についた汚染物に触れたり吸い込んだりしないようにする手順が求められます。

 

・汚染の拡大を防ぐため

 感染症対策の現場では、自分を守ると同時に、環境も守らなければなりません。もし作業後に完全に汚染を除染することができないまま休憩室や隣の建物等に移動した場合、防護服表面に残ったウイルスや菌も一緒に移動させてしまうことになり、自分が病原体を運んでしまう可能性があります。そのため、作業後は適切な手順で脱衣し、汚染を清浄空間に持ち出さないようにすることが重要です。

 

正しく着用できていない例を見てみましょう

先に、防護服や保護具を「正しく着用できていない」NG例とそのリスクについて見てみましょう。

※およそ10年前の雑誌に掲載されていた、海外の感染症対策現場の写真を参考にしたイラストです。

 

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NG例1 SARS(重症急性呼吸器症候群)流行期の検査の様子

・マスクをフードの上に装着している。

・防護服と手袋の隙間から肌が露出している。

 マスクをフードの上に装着していると、脱衣の際は先にマスクを外した後に防護服を脱ぐことになり、防護服に付着した汚染を伴う飛散物を吸引するリスクがあります。また、防護服と手袋の隙間から露出した肌にウイルスを含む飛沫が付着していると、正しく消毒しない限り、手袋を外した素手で、付着したウイルスに触れてしまい自身が感染するリスクや感染源を広げてしまう可能性があります。

 

NG例2 鳥インフルエンザ感染症

・鳥インフルエンザの検査時に感染の可能性のあるトリを素手で触っている。

・マスクや保護めがねもしていない。

 作業者の身体や防護服の下衣に付着した感染力の高い鳥インフルエンザウイルスを外部に持ち出してしまうリスクが高いです。また、感染した鳥に触れる等濃厚接触をした場合等、きわめて稀に鳥インフルエンザウイルスがヒトに感染することもあるため(※)、作業者自身の感染予防としても不十分です。

※参考 「鳥インフルエンザに関するQ&A」(厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou02/qa.html 最終閲覧日 2022年12月22日)

 

適切な着用のポイントとコツ

― 着用時の2つのチェックポイント ―

1.目、鼻、口、皮膚を覆うこと

 防護服を着る目的は、汚染源との間に“盾”を設けて直接汚染源に触れないようにすることです。そのため、皮膚や粘膜、呼吸の際の空気の入り口(鼻や口)を覆ったり、マスクを使ってばく露量を減らしたりすることが必要です。着用の際は、きちんと全身を覆えているか確認しましょう。

 

2.脱ぎやすい順番で着用すること

 着用の際は汚染源に近づく前で危険はありませんが、脱衣の際には防護服やマスク等の表面には病原体等が付着している前提で行うことが重要です。

 脱衣の際、“一番汚染されていると考えられるアイテム(アウター手袋)”を最初に外すこと(または除染)ができ、“最後まで防護すべき鼻と口を覆うアイテム(マスク)”は最後に外せるような順番で着用しましょう。

 

― 着用時の3つのコツ ―

1.二人一組でチェックしながら着用する

 「人手が少ない!」というときは、鏡があればかなり違います。「鏡なんか現場にない!」というときは、車の窓ガラスでも、着用している姿が映れば代用可能でしょう。特に顔まわりをチェックしましょう。

「マスクをきちんと着用できているか?潰れたり、変形したりしていないか?」
「保護めがねとマスクの間等、隙間が大きく空いていないか?」

 全く隙間無しにするのは難しいですが、少しでも隙間がなくなるように鏡を見ながら調整しましょう。

 

2.マスクはフードの下に着用する

 例えばフード付きのつなぎ服タイプの防護服を着用する際に、フードの上にマスクをつけてしまうと、マスクを取ってからフード(防護服)を脱がなければならなくなり、防護服に付着した汚染源を吸い込んでしまうリスクがあります。

 

3.作業中に防護服や手袋がずれてしまう可能性があるときは、粘着テープで留めておく

 アウター手袋と袖、シューズカバーと裾部分を粘着テープで留めておくと、作業中にずれが生じ肌が露出してしまうのを防ぐのに有効です。

 

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適切な脱衣のポイントとコツ

― 脱衣時の2つのチェックポイント ―

1.一番汚染されているアイテムを最初に外し、マスクは最後に外す

 冒頭にご説明した通り、“自分を守るため”に一番重要なポイントです。

 

2.清浄区域と汚染区域を分けて、汚染を清浄区域に持ち出さないようにする

 “汚染拡大を防ぐため”には、病原体等による汚染をなるべく小さな範囲で封じ込めるために、病原体等によって汚染されている区域(汚染区域)と汚染されていない区域(清浄区域)に分けておきます。(詳しくは「感染症対策>使い方」をご覧ください)

 脱衣も定められた場所で行い、清浄区域に汚染の可能性がある防護服や保護具を持ち込まないようにします。

 

― 脱衣時の2つのコツ ―

1.手袋は丸めながら外す

 手袋の裏側(内側)を表側に返し、丸めながら外していきます。この時、手袋を外される側の手首をくるくると動かすと静かに外しやすいです。

 

2.防護服は裏返し丸めながら脱ぐ

 脱ぐ前に、手を袖の中に入れ、袖越しに防護服を掴みながら脱ぐと、直接手で袖の外側に触れずに脱ぐことができます。もし指先が汚れた場合は消毒をしてから次の手順に進みましょう。汚染を広げないためにも、裏返しながら、かつ丸め込みながら脱ぐと、脱衣後の服が小さくまとまります。

 脱衣の際に腕を前で交差すると、防護服の袖に付着した汚染が下衣に移ってしまうので注意しましょう。

 

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着脱方法を動画でおさらい

それでは、着用・脱衣のチェックポイント・コツを踏まえながら、動画で振り返ってみましょう。

 

旭・デュポン フラッシュスパン プロダクツ株式会社「タイベック®防護具の正しい装着・脱衣方法(感染症対策用)」
(https://www.youtube.com/watch?v=NCWnahgtGYs)

 

「やってしまった!」失敗したときの対処法

もし次のようなアクシデントが起きてしまったときの対処法をご紹介します。

 

・作業中に防護服が破れた場合

 汚染が服内部に浸透してしまった可能性があるなら、すぐに作業を中断し、脱衣、除染を行いましょう。

 

・汚染物が顔面に噴射した場合

 目や鼻等がきちんとマスクや保護めがねで覆われていれば防護はされています。ただし、飛沫やエアロゾルは思わぬ方向からばく露し、病原体の毒性や感染力等によりリスクの程度が左右されます。より重篤な症状をもたらす病原体、より少ない量で感染が成立する病原体の場合は注意が必要です。

 まずは慌てずに作業を中断し、脱衣と洗顔、消毒を行いましょう。

 なお、顔面の防護には、フェースシールドの併用や全面形マスクやフードタイプの電動ファン付き呼吸用保護具の利用も有効です。作業内容や病原体の毒性・感染力に応じて、リスクを最小限にできる保護具を選びましょう。

 

最後に忘れずに行いたいこと

最後に、手洗い、うがい、洗顔を忘れずに行いましょう。基本的な衛生テクニックが、感染対策にも効果があります。

 


 

 防ぎたい有害物質の種類や性状、従事する作業によって適した防護服や保護具が異なると、その着方・脱ぎ方もおのずと変わります。今回は感染症対策時の防護服や保護具の着用方法・脱衣方法を中心にそのポイントを解説しましたが、用途別の着用方法・脱衣方法もご紹介していますので、ぜひカタログダウンロードページもご覧ください。

 また、有事の際に適切な着用・脱衣をするには事前の訓練も必要です。アゼアスでは「着脱方法の講習会」等のサポートも行っておりますのでお気軽にお問い合せください。

 

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