【法令・ガイドライン】化学防護対策

化学物質の規制が大きく変わろうとしています

化学物質の自律的な管理を基本とする仕組みへ

これまで職場における有害化学物質の規制は、次の2つにより規定されてきました。

 

●特定化学物質障害予防規則(以下 特化則)

●有機溶剤中毒予防規則(以下 有機則)

 

これらは、国が化学物質を特定して、危険性の評価から管理手段・設備要件などを定め、事業者が自社の手順やルールを作成して実施するというものです。

 

しかし、年々技術の進歩に伴って増えていく化学物質の種類に追いついていないのが現状です。例えば平成30年度の化学物質による労働災害の発生件数は全部で416件ですが、この内規制対象物質によるものは77件のみで、規制対象にされていない物質による災害が約8割を占めます。
また、リスクアセスメントの実施率は、平成29年調査時点で53%となっています。

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自律的な管理へ

厚生労働省「職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会 報告書令和3年7月19日)」では、今後の方針として次のことが示されています。

 

●国が行うこと

・対象とする化学物質の危険性を見極め、管理基準を設定

・国によるGHS分類を実施

 

●事業者が行うこと

・化学物質へのラベル表示とSDSの発行

・リスクアセスメントの実施

・ばく露濃度を低減させるための措置を実施

 

基本的な方針は、国がばく露濃度等の管理基準を定め、危険性・有害性に関する情報の伝達の仕組みを整備・拡充し、事業者はその情報に基づいてリスクアセスメントを行い、ばく露防止のために講ずべき措置を自ら実施することが、提示されています。

 

今後の見通し

現状では、製造・使用禁止化学物質は8種類、特化則・有機則で規制されている化学物質が123種類、リスクアセスメントが義務付けられている化学物質は674種類が定められています。今後は令和5年度までに1,800物質(すでに義務化物質も含む)、令和6年度以降は毎年50~100物質を新たに義務化物質に指定する見通しです。

 

この自律的な管理の導入が促進されれば、特定化学物質障害予防規則、有機溶剤中毒予防規則、鉛中毒予防規則、粉じん障害予防規則、四アルキル鉛中毒予防規則は、5年後に廃止することにも言及されています。

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自律的管理のための体制確立

また、「職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会 報告書」では、適切な管理体制の確立のために、次のことが提案されています。

 

(ア)化学物質管理者の選任義務

GHS分類済み危険有害物を製造し、又は取り扱う業務に労働者を従事させる事業場においては、業種、規模にかかわらず化学物質管理者を専任し、以下の業務を担当させることを義務付ける。

・ラベル・SDSの確認及び化学物質に係るリスクアセスメントの実施 等

 

(イ)保護具着用管理責任者の選任義務

上記(ア)の事業場のうち、労働者のばく露防止措置の方法として、保護具の使用を選択する場合は、呼吸用保護具、保護衣、保護手袋等の保護具の選択、管理等を行う責任者として、保護具着用管理責任者の選任を義務付ける。

 

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参考資料:
厚生労働省 報道発表資料 2021年7月(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_19931.html 最終アクセス日:2022年5月31日)
・「職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会 報告書令和3年7月19日)」
・「化学物質規制の見直しについて(職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討報告書のポイント)令和3年7月19日)」

厚生労働省 第6回 職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会 資料(令和元年8月29日)(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_11430.html 最終アクセス日:2022年5月31日)
・「参考資料2 化学物質による健康障害


化学防護対策に関する法令

労働安全衛生規則

1972年(昭和47年)に、従来、労働基準法の一つの章として規定されていた安全衛生に係る規定を独立させ、労働安全衛生法が制定、公布されました。その後、労働安全衛生規則等で細部を定めています。

※出典:中央労働災害防止協会 『新 衛生管理(下)第1種用』, 中央労働災害防止協会, 2009, P3,7

特定化学物質障害予防規則

昭和40年代に各種化学物質による健康障害の増加が社会問題になり、化学物質による中毒その他職場内外における疾病の発生や、環境汚染を予防するため、1972年(昭和47年)に特定化学物質障害予防規則が施行されました。

 

主な規定内容

●化学物質の製造・取扱について施設上の措置等

●排気、排液の処理について

●作業環境測定、記録の保管(3年又は30年)について

●健康診断の実施と記録の保管(5年又は30年)について

●保護具について

出典:中央労働災害防止協会 『新 衛生管理(下)第1種用』, 中央労働災害防止協会, 2009, P230-254

有機溶剤中毒予防規則

1959年(昭和34年)に東京都内の家内工業等で発生した多数のベンゼン中毒を契機として、1960年、毒性の明らかな有機溶剤51種類を対象として有機溶剤中毒予防規則が制定、翌年施行されました。

 

主な規定内容

●局所排気装置やプッシュプル型換気装置の設備、性能について

●有機溶剤作業主任者の選任や設備の点検など、管理体制について

●作業環境測定(記録の保管は3年)、及び健康診断(記録の保管は5年)について 

※出典:中央労働災害防止協会 『新 衛生管理(下)第1種用』, 中央労働災害防止協会, 2009, P183-195

鉛中毒予防規則

鉛は加工しやすく、腐蝕に強いことから多方面にわたって利用されてきました。その反面、製造や使用の過程で鉛中毒が発生することも古くからわかっていました。そこで1967年(昭和42年)に鉛中毒予防規則が施行されました。

 

主な規定内容

●設備、換気装置の構造、性能等

●鉛作業主任者の選任、局所排気装置の定期自主点検(記録の保管は3年)

●作業環境測定(記録の保管は3年)及び健康診断(記録の保管は5年)

●呼吸用保護具・作業衣について

第59条に、一定の鉛業務であって、粉状の鉛等を取り扱う業務については、化学防護衣類を着用させるときを除き、その業務に従事させる労働者に作業衣を着用させなければならないと規定されています。

※出典:中央労働災害防止協会 『新 衛生管理(下)第1種用』, 中央労働災害防止協会, 2009, P199-218

土壌汚染対策法

工場の跡地などで発見される有害物質に汚染された土壌について、正しい実態把握と、健康被害の防止を図るため、2002年(平成14年)に制定されました。

 

主な規定内容

●調査と区域の指定について

土地所有者等(管理者又は占有者)が指定調査機関に調査を行わせ、結果を都道府県知事に報告する。その後、都道府県により要措置区域等が指定されます。

 

●汚染の除去等の措置について

都道府県知事等が、土地の所有者等に講ずべき汚染除去の措置を示して、除去計画の提出を指示します。
都道府県が指示する指示措置は、地下水等の封じ込めと、盛土、土壌汚染の除去などです。
土地の所有者等が講ずる措置(実施措置)には技術的基準が決められており、これに適合しない場合は、都道府県知事等から計画の変更命令が出されます。

参考:環境省・(公財)日本環境協会「土壌汚染対策法のしくみhttps://www.env.go.jp/water/dojo/pamph_law-scheme/00_full.pdf 最終アクセス日:2022年5月31日)

 


※参考資料:下記資料一部抜粋および参考にして作成
中央労働災害防止協会 『新 衛生管理(下)第1種用』, 中央労働災害防止協会, 2009
環境省・(公財)日本環境協会「土壌汚染対策法のしくみ」https://www.env.go.jp/water/dojo/pamph_law-scheme/00_full.pdf 最終アクセス日:2022年5月31日)

 


 

※本ページに記載の内容は2022年5月末時点の情報です。

 

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